【資産運用おすすめランキング】データと原則から考える、投資先と年代別資産配分

パンデミックからの回復が期待されながら、資源・エネルギー高と人手不足で物価が上昇、その安定化のための金融引き締めで世界的に資産価格が下落している2022年。

この激動の相場環境に右往左往し、これからどのように資産作りをすすめるべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

しかし、こんな不安定な相場だからこそ、投資家個人はぶれない軸をきちんと持って資産運用に向き合いたいもの。

 

そこでこの記事では、個人の投資家がいま何を根拠に、どんな投資をしていったらいいかを、できるだけ客観的なデータをもとに「ランキング形式」で考えていきたいと考えました。

先に結論(ランキング第1位)だけ書いておきます。

個人投資家、特に投資初心者ができるだけ安全かつ効率的にお金を増やすおすすめの資産運用方法は、

NISAの免税枠と複利パワーを最大限活かした米国株式インデックスファンド(為替ヘッジなし、配当再投資型)の定額定期長期つみたてをメインとする「コア・サテライト」投資

です。

「なんだ、要するにインデックスファンドのつみたてか!」

と思ったそこのあなた、その前後に書かれた諸々の条件の意味をきちんと理解できているでしょうか。

これらの理解が中途半端だと、確固とした資産づくりはできません。

今のような相場環境で、損失が増えたとたんつみたてをストップしたり、安易なトレードに手を出して損失をふくらませたりするのがオチでしょう。

 

信念をもって資産形成に取り組めるよう、まずはこの結論に至った根拠となる「資産運用の大原則5カ条」を第1章で示していきます。

投資先の種類や商品が数ある中で、なぜこの方法をオススメするのかが納得してもらえるのではないかと思います。

また、今後投資をする上で知っておいてほしい原則をまとめていますので、最低限のマネーリテラシーを身につけたい人はぜひ読んでみてください。

少し長くなるので、先に第2章のランキングに目を通してもらい、根拠を知りたくなったら第1章に戻るという形でもいいでしょう。

 

さらに第3章では、ランキングをもとに、各年代の目標額と持っておきたい資産の内容や比率を「ポートフォリオ案」として提示しています。

この通りでなくてもまったく問題ありませんが、ランキングをどう実践に落とし込めるかの参考にしてもらえたらと思います。

 

なお本記事は、生徒数2万人超の日本一の投資の学校(※2021年トレンドリサーチ調べ)、グローバルファイナンシャルスクール(GFS)監修のもと、成功した投資家ら講師陣の教えや2000近い講義動画の知見を総動員して書かれています。

執筆者の主観をできるだけ排した記述を心掛けましたが、「投資に絶対の正解はない」ことを念頭に、あくまで考え方の1つとしてお読みいただき、最終的な投資判断は自己責任でお願いします。

監修者:市川雄一郎 監修者:市川雄一郎 
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP®。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。 グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、講演依頼、メディア出演も多数。著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え」(日本経済新聞出版)

公式X アカウント 市川雄一郎@お金の学校 校長

目次

第1章 ランキングの根拠となる「資産運用の大原則」5カ条

ここではランキングを発表する前に、その根拠となる金融知識を5つ説明していきます。

内容は以下の通り。

資産運用は、投資先やその理由をさらに細かく考えていく必要がありますが、まずは「最低限この5つを知っておいてほしい」という内容だけを取り上げています。

この5つの大原則が頭に入っていれば、おのずと投資先やあなたの投資行動も自信をもって決められるようになると思います。

資産運用の大原則1 資産は「長期+複利」で育て、「分散」で守る

投資は時間をかけて「長期」で続けることで「複利」の大きな果実を得ることにつながります。

まずはこの原則をしっかり資産運用の軸として持つことがとても大事です。

上げ下げの激しい不安定な相場環境が続いても、この軸さえぶれなければ、たとえ一時的に含み損になっても長期目線でどっしりと資産形成が続けられるでしょう。

また投資先や投資回数を「分散」させることで、暴落をくらって資産を一気に失うリスクを軽減できます。

資産を大きく減らさなければ投資は成功したも同然で、この両方の観点が資産運用には欠かせないと言えます。

 

「複利」とは、元本だけでなくついた利息にも利息が上乗せされていくことです(元本だけに利息がつくことを「単利」といいます)。

たとえば年10%のリターン(投資益)が期待できる投資商品に100万円投じた場合、1年目のリターンは10万円なので元利合計は110万円となります。翌年は元本だけでなく、この元利あわせた110万円に対して10%(11万円)のリターンが上乗せされ、さらにその翌年にはこの元利(121万円)に10%が上乗せされ、、、というふうに続きます。

複利と単利_利益の出方の違い

この積み増し分が、長期になればなるほど加速度的に大きくなり、資産を大きく増やす原動力となるのです。

下のグラフは、毎月33,333円(年間40万円)を年平均9%のリターンがある投資商品の購入にあてた際の資産増加のシミュレーションです。

青い部分が実際に自分で投資した元本で、黄色が利益のつみまし分です。元本は10年で400万円、20年で800万円となる間に、元利合計は10年で645万円、20年で2,226万円にふくれあがっているのがおわかりいただけると思います。長期になればなるほど雪だるま式に利益が増えていく。これが複利のパワーです。

資産形成にとってこの「複利」ほど重要な要素はないと言っても過言ではありません。

かの天才物理学者アインシュタインは、「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」と語ったそうです。20世紀の資本主義社会の急速な発展の理由をそこに見たのかもしれません。

不安定な相場にあってなかなか資産が増えないことにいらだったり、含み損に恐怖したりして、せっかくのつみたて投資を途中で投げ出してしまう人は、この大きなパワーを殺しているようなものと言えます。

複利の重要性をもっと理解したい方は下記の記事をお読みください。

図でわかる複利の凄さ!投資で最大限に複利効果を得るためのコツとは

 

続いて「分散」の重要性について説明します。分散とは文字通り、集中させずに散らばらせるという意味です。

分散には以下の3つの考え方があります。

①1つの銘柄・投資先に集中させずにばらけさせる「銘柄分散」

②一度に資金全部を使い切らず時間をかけて分けて買っていく「時間分散」

③保有する資産の種類や買い付ける国・市場を分ける「市場分散」

いずれも暴落や倒産、デフォルト(債務不履行)などで資産が一気に減る一点集中投資のリスクを下げ、新たに資産を買い増す余力を残す狙いがあります。

 

「銘柄分散」は、たとえば同じ自動車株でも、トヨタとホンダと日産に分けて投資すれば、どこか1つがダメになってもほかの2つでカバーできるという考え方です。

また、ハイテク、金融、ヘルスケア、日用品、航空・鉄道、飲食・小売り、エネルギーなど、成長度合いの異なる業界に分散させることも銘柄分散の狙い1つです。

 

「時間分散」には、一度に資金全部を使ったらすぐ直後に大暴落がきた、なんていう悲劇を避ける意味があります。

また、価格が下落したときでも少しずつ買い増すことで購入額の平均単価を低くできるというメリットがあります。

これを「ドルコスト平均法」といい、やはり資産運用では非常に大切な考え方です。

 

「市場分散」には、異なる値動きをする資産を複数持つことで、景気動向の影響や為替変動のリスクを軽減するメリットがあります。

たとえば日本株と米国株の中国株を買えば、円とドルと元という異なる通貨の資産を持つことになります。

また株式と国債と不動産を持てば、資産がいっぺんに下がるというダメージをやわらげられます。

 

一度に同じ投資先に集中投資すると、失敗したときのダメージがかなり大きくなります。

若いうちはやり直しがきくかもしれませんが、年をとってから退職金やなけなしの預貯金を一気に全部おなじものに投資して失敗すると取り返しがつかなくなります。

資産運用には「大きく増やしたい」と思う前に「大きく負けない」という視点を持つことが大事なのです。

資産運用の大原則2 資産は「投機」ではなく「投資」で増やす

個人投資家が陥りやすい間違いに、「投機」を「投資」と勘違いすることが挙げられます。

「投資」とは、富を生むものにお金を投じて利益を得ること。

「投機」とは、タイミングをはかってトレードし、売買差益を得ること。

という大きな違いがあります。もう少しくわしく見てみましょう。

 

まず「投資」とは、富やサービスを産み出す「資本」(=会社、従業員、土地、設備など)にお金を投じることを指します。

投資家は、その投資先の成長性や収益性などを分析し、それが生み出す利益を配当で得たり、成長に伴う資産価値の上昇を享受します。

この投資分析を「ファンダメンタル分析」と呼びます。

 

一方「投機」とは、過去の値動きをチャートなどで分析し、株式や外国為替(FX)などを適切なタイミングで取引することを指します。

この分析を「テクニカル分析」と呼びます。

投機には、取引時間の長さによって「スキャルピング」「デイトレード」「スイングトレード」などの呼び方がありますが、いずれも短期トレードで売買差益を得るのが狙いです。

ファンダメンタル分析と違い、テクニカル分析には手軽さや汎用性があり、初心者が手を出しやすいというメリットがあります。

しかし、売買には買い手と売り手との利益の奪い合いがあり、一度の取引で勝者と敗者が分かれる「ゼロサムゲーム」という側面もあります。

売買の向こうの相手は、経験豊富なプロトレーダーであったり高速取引できるコンピュータであったりしますが、この投機でお金を大きく増やすには、彼らを相手にこのゲームに長期で勝ち越していく必要があり、結果的に初心者にはとてもハードルが高くなります。

これは「資産運用」とはまったく別物と考えたほうがいいでしょう。

 

そもそもわたしたちが運用し、増やそうとしている「資産」とは何かを考えれば、投機が資産を増やすものではないと理解できるでしょう。

最初に書いた通り、「資産」とは投下した資金をもとに富やサービスを産み出し、投資家に「利益」をもたらしてくれるものです。

世界的ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏は、「資産とは私のポケットにお金を入れてくれるもの」と説明しています。

 

わたしたちグローバルファイナンシャルスクール(GFS)は、正しい意味で「資産」にあてはまるのは次の3つのみだと考えます。

①株式

②債券

③投資用不動産

この3つだけ。共通するのは、背景に必ず人(国家、企業含む)の営みがあり、絶えず富を生み出し続けていることです。

株式は企業が投資家から資金調達する手段であり、そこには従業員がいて、事業によって利益を生み出しています。

債券は、国や企業が投資家から借金をして資金調達することであり、やはりその背景には国民による経済活動や従業員による事業活動があり、それが利子として投資家に還元されます。

投資用不動産も、賃借人の経済活動があり、それが賃料という形で投資家の収益となります。

これら人の営み、経済活動が基本にある「資産」にお金を投じることを「投資」と呼ぶのです。

 

これらの投資先を選ぶには、以下のファンダメンタル分析が不可欠と言えます。

株式ーー企業の業績や財政状況、成長性、配当の大きさなど

債券ーー国や企業の財政状況、成長性、信頼度(格付け)など

投資用不動産ーー収益物件の現在価値と将来価値、収益性など

投資初心者はこのファンダメンタル分析に苦手意識を持ち、つい先に挙げたテクニカル分析による「投機」に手を出してしまいがちです。

「投資で失敗して資産をなくした」「大きな借金を抱えて自己破産した」という話をよく聞くと思いますが、だいたいがこの「投機」で失敗しているのです。

それも、自己資金の何倍もの信用取引(=借金)をして失敗するケースが目立ちます。

資金を安全に分散管理しながら「投資」運用すれば、投資先が全部倒産したり債務不履行にでも陥らない限り、資産がゼロになることはまず考えられません。

万一そんな事態が起きて資産がゼロになることはあっても、自己資金の何倍もの信用取引をしない限り借金を抱える(資産がゼロ以下になる)心配はないでしょう。

長期の投資は、お金の取り合いではなく、投資先の安定的な成長によって参加者の多くが資産を増やせる「プラスサムゲーム」でもあるからです。

資産は「投機」ではなく「投資」で増やすものだと肝に銘じて、安易に投機に手を出すのはやめましょう。

資産運用の大原則3 資産を大きくするには「利益再投資」を心がける

投資で狙う利益には、大きく分けて次の2つがあります。

価格の値上がり益を目指す「キャピタルゲイン」

定期的な配当を得る「インカムゲイン」

どちらを重視するかは投資家本人の資産状況やリスク許容度によって変わりますが、資産を増やす上でとても大事なことがあります。

それは、どちらの利益を得た場合も、すぐにそれを再投資したほうがいいということです。

 

インカムゲインを狙う場合、配当が支給されるたびに税金が課せられます。

日本株や日本の投資信託の場合は約20%、米国株の場合はそれに10%上乗せした金額が税金として引かれます(確定申告すれば米国の税金分は後で還付されます)。

大原則1で触れたように、資産は「長期+複利」で資産を増やしていくのが大事なので、配当が出るたびに税金が引かれるのは両方の観点で不利なのです。

その点、キャピタルゲイン狙いの場合、利益を確定しないで保有し続ける限り税金が引かれないため、インカム狙いより有利といえます。

とはいえ、持ち株を1つも利益確定しないで持ち続けるのは難しいでしょうから、やはり再投資が必要となります。

 

これらの税金がすべて免除されるのがNISA・つみたてNISAです。

NISAなら年120万円×5年=600万円、つみたてNISAなら年40万円×20年=800万円の購入枠があります。

単年で売買を繰り返していたら気づかないでしょうが、長期でリターンを大きく伸ばした場合、この免税のメリットははかりしれません。

先に示した資産推移のグラフがまさにこのつみたてNISA枠を使った投資シミュレーションです。もう一度見てみましょう。

20年で増えた2,226万円の資産を売却した場合、半分以上の1,426万円が利益のため、ふつうならこの約20%にあたる290万円余りが税金でとられることになります。

NISA制度はこの金額が免除されます。長期の資産形成にとって大いに有利な制度ですので、免税枠は最大限使い切るほうがいいでしょう。

 

また、株ではなく「投資信託」で資産を増やす場合、最初の購入設定の際に「配当受け取り型」と「配当再投資型」を選ぶことができます。

この場合も、「再投資型」を選ぶことが重要です。配当を使わずに自動で再投資できるため、最終的な資産がより大きくなるでしょう。

資産運用の大原則4 資産はリスクとリターンを考えて組み合わせる

資産の種類や分類のことを資産クラス(アセットクラス)といいます。

株式、債券、不動産のほか、貴金属、穀物や原油などの商品先物、現預金もアセットクラスに入ります。

これを分散する際は、それぞれのリスクを考慮しながら、できるだけリターン(運用益)が大きくなるような組み合わせを考える必要があります。

この資産クラスごとに異なるリスクやリターンの大きさを、投資家は理解しておく必要があります。

 

まずは、この200年チャートを頭に入れておきましょう。

資産トータルリターン

これは米国の投資研究者であるジェレミー・シーゲル氏(ペンシルベニア大ウォートン校名誉教授)が主な資産クラスの長期リターンを分析したチャートです(『株式投資』より)。

1801年に異なる資産クラスに1ドルずつ投じた場合、それぞれ200年で何倍になったかを示しています。

200年の間には当然物価も上昇していますので、この物価の上昇率(インフレ率という)を差し引いて、200年前と今とで価値を比較できるように調整しています。

結果は、株式が約60万倍と大きく増えて他の資産クラスを圧倒しています。

長短国債は300~1000倍程度、金は1.3倍とほぼ実質的な価値は変わらず、投資をしなかった現金(ドル)は物価上昇によって元値の10分の1以下(0.07ドル)に価値が失われました。

大前提1で説明した通り、人(国民、従業員)の経済的営みによって絶えず富を生み続ける「株」や「債券」は資産増のスピードがほかより速くなっていますね。

 

もう少し細かい資産クラスの最近のリターンを見てみましょう。

下図は米国のデータサービス会社 NovelInvestor.comが提供している直近15年の資産クラス別リターンの一覧表です。

Novel Investor Asset Class Returns Quilt

各年で最もリターンが大きかった資産が一番上の段、2位以下がその下の段に続いています。

左下の表は過去15年のリターンの平均、および最大値・最小値のまとめです。

これを見ると、平均リターンの1位は米国の大型株(オレンジ)の+10.66%、2位は同小型成長株(青)の+8.69%と、米国株式が上位を独占しています。

3位以下は、REIT(不動産投資信託=赤)、ハイイールド債(茶)、新興国株(紫)、先進国株(灰)、高格付け債(緑)の順。現金(黄)は0.81%でほとんど増えていません。

 

日本株や日本の国債、原油などを含めた資産のリターンは、以下の「資産クラス別リターン」の10年表でおおよその推移がわかります。

資産クラス別リターン

景気にはサイクルがあり、その時々で主役となる資産は変わってきますが、やはり安定的に上位にいるのは先進国(主に米国)と日本の「株式」だとわかるでしょう。

保有する資産クラスによってどれだけ増える速さが違ってくるかおわかりいただけると思います。

 

リターンの大きい資産クラスはそれだけリスクも高いため、それだけをただ追い求める集中投資は危険が大きすぎます。

一方、リスクの小さい安全資産は持っていても大きなリターンが見込めません。ただの現預金を持っていてもインフレで価値が目減りするだけだということは、最初のシーゲル教授の200年チャートで見た通りですが、リターンの小さい資産はこの「インフレリスク」にさらされます。

個人投資家はこのリスクとリターンを秤(はかり)にかけつつ、年齢や資産状況、リスク耐性(=変動にどれだけ耐えられるか)も考慮に入れながら、自分にとって最適な資産の組み合わせ・配分となるよう自分自身で考えなくてはなりません。

資産運用の大原則5 資産は分散しすぎず、主役とワキ役のメリハリをつける

保有資産の安全のために分散は大事だと書いてきましたが、実は分散しすぎるのも考えものです。

分散がききすぎていると、何か1つ調子のいい資産があっても、複数の低迷する資産で相殺され、資産の伸びが期待しにくくなるためです。

著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は、そのときどきで常に10前後の銘柄に集中投資することで莫大な資産を築いてきました。

とはいえ、投資初心者がバフェット氏のようなすぐれた銘柄選択の眼をすぐ身に着けるのはなかなか難しいでしょう。

 

そこで推奨したいのが、長期で安定的に資産を増やせる「インデックスファンド」への集中投資です。

インデックスファンドとは

資産クラスでいうインデックスは「株価指数」のことをさします。ある特定の国の株式市場に上場する代表銘柄で構成され、その値動きで相場や景気動向などを知る目安となる数値で、有名なのは米国の「ダウ平均」「ナスダック平均」、日本なら「日経平均」「TOPIX」など。

インデックスファンドは、その指数とまったく同じ銘柄数・バランスで組成された投資信託のことです。たとえばダウ平均なら工業株30銘柄、日経平均なら日本の大型株225銘柄と決まっていて、銘柄数やバランスを同じにすることで、インデックスと全く同じ値動きをする(連動する)よう組成されています。

インデックスファンドの対になる用語に「アクティブファンド」があります。これはファンドマネージャーら運営事業者が自らの分析・判断に基づいて中身の銘柄を能動的(アクティブ)に組成しているためです。

インデックスファンドはそれ自体がたくさんの銘柄に分散されていながら、全体で1つの成長株のように投資できます。

つまりインデックスファンドに投資することは、個別企業ではなく、その株価指数が示す市場(または業界)全体の成長にお金を投じるという意味合いがあります。

 

インデックスファンドでとりわけ人気なのが米国株のインデックスに連動するファンドで、すべての資産クラスの中でも特に成長力が高いのが特徴です。

投資の世界で特に有名なのが、米国の大型株500種の株価指数「S&P500」に連動するファンドです。

なぜ有名かというと、このS&P500自体が、1957年の指数算出以来60年以上にわたり、長期で年平均9%以上という非常に高いリターンを達成してきた歴史と実績があるからです。

以下はS&P500の長期の騰落率をもとに期間別のパフォーマンスを示した表です(出典は米国版WikipedeiaのS&P500の項目)。

1年単位トータル5年ごと10年ごと15年ごと20年ごと25年ごと
最高34.11%37.58%28.56%19.21%18.93%17.88%17.25%
最低−38.49%−37.00%−2.35%−1.38%4.24%5.62%9.07%
平均12.36%15.43%14.02%12.94%10.71%11.55%10.76%

1年単位でみれば最高で年34%上昇、最低の年にはマイナス38%になりますが、これが5年ごと、10年ごとと幅を広げていくと、徐々に数字が収斂(しゅうれん)していき、最終的にはこの指数のどこの25年を切り取っても選んでも、最低で9%強、平均で10%強のリターンがあることがわかります。

この長い歴史のパフォーマンスがあるため、世界中の多くのファンドマネージャーが、毎年このS&P500を超えたいと目標にし、また自らのファンドの成績を語るときに引き合いに出すのです。

 

S&P500を構成する銘柄は、米国国内だけでなく世界を相手に事業を展開するグローバル企業ばかり。時価総額上位の企業はいずれも世界の全銘柄の中でもトップクラスです。

これは2022年6月末現在の世界時価総額ランキングのベスト20です。

順位企業時価総額
1位サウジアラムコ2.27兆ドル
サウジアラビア
2位アップル2.21兆ドルアメリカ
3位マイクロソフト1.92兆ドルアメリカ
4位アルファベット1.44兆ドルアメリカ
5位アマゾン1.08兆ドルアメリカ
6位テスラ6,977億ドルアメリカ
7位バークシャー・ハサウェイ6,025億ドルアメリカ
8位ユナイテッドヘルス4,819億ドルアメリカ
9位ジョンソン&ジョンソン4,671億ドルアメリカ
10位テンセント4,460億ドル中国
11位メタ・プラットフォームズ4,364億ドルアメリカ
12位台湾セミコンダクター4,239億ドル台湾
13位ビザ4,167億ドルアメリカ
14位貴州茅台酒3,835億ドル中国
15位エヌビディア3,778億ドルアメリカ
16位エクソンモービル3,608億ドルアメリカ
17位P&G3,450億ドルアメリカ
18位ウォルマート3,333億ドルアメリカ
19位JPモルガン・チェース3,307億ドルアメリカ
20位ロシュ3,284億ドルスイス

 

 上位10社のうち8社、上位20社のうち15社を米国企業が占めており、そのすべてがS&P500指数の組み入れ銘柄です。

アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾンなどなど、日本人にもなじみのある企業が多数並んでいますね。

2021年8月、GAFAとして知られる4社ーーアルファベット(グーグル)、アップル、フェイスブック(現社名はメタ・プラットフォームズ)、アマゾンの時価総額合計が日本の全上場企業(約3800社)の時価総額を超えたと報道され(日経新聞記事参照)、話題になりました。

2022年に入って株価は大きく落ち込みましたが、現在も4社の合計は約528兆ドル、1ドル140円換算で約739兆円あり(9月15日現在)、日本の時価総額735兆円(8月末現在、日本取引所グループ調べ)とほぼ同じかまだ若干上回っています。トップ10圏外に落ちたメタの代わりに上位のマイクロソフトを入れた4社なら完全に上回ります。

これだけでもS&P500全体がどれだけの規模の会社が集まっているかおわかりいただけるでしょう。

また、成長著しい銘柄と業績が衰えた銘柄との入れ替えも毎年行われています。

近年では電気自動車のテスラがこの指数に採用され、あっという間に時価総額上位(S&P500内で現在5位)に躍り出ました。

 

グローバルに商売できる企業が多い上、常に新陳代謝していることが、この指数が高い成長を維持している理由と言えるでしょう。

インデックスファンドの優位性を多くの人に知らしめた米国のチャールズ・エリス氏は、著書『敗者のゲーム』の中で、経験豊富なファンドマネージャーが運営するアクティブファンドは、年平均で約6割がこうしたS&P500のような市場平均に勝てず、10年では7割、20年では8割が負けていると報告。その上で「実績を見る限り、ほとんどの投資信託、年金や財団など機関投資家も市場には勝っていない。上回る成果は時おり見られるが、長続きはしない」と書いています。

そのため、わざわざ高い手数料を払って他のファンドを買わなくても、このS&P500のような市場平均に連動するファンドだけで十分な資産が築けると期待できるわけです。

 

とはいえ、「米国のインデックスファンドだけで十分」と決めつけてはいけません。それは単なる思考停止です。

インデックスファンド自体は組み込まれた銘柄の分散がきいているといえますが、資産クラスで言えば株式のみであり、分散がきいているとは言えません。

さらに言えば、もっと成績のいい個別銘柄を探したり投資を勉強したりする機会も得られないままです。

そこでオススメしたいのが「コア・サテライト戦略」です。

この戦略は、資産のコア(核)を上記のインデックスファンドなどで作り、それを周回する衛星(サテライト)のように別の資産クラスで投資していくこと。

下記はそのイメージ図です(出典:マネックス証券)。このサテライトを、年代や資産状況によってさまざまに変化させることが肝心なのです。

 

 

第2章 資産運用おすすめランキング

さて、資産運用の大原則を頭に入れてもらったところで、本題の資産運用おすすめランキングに入りましょう。

まずは本記事の冒頭でも紹介したこれから。

第1位 NISAの免税枠と複利パワーを最大限活かした米国株式インデックスファンド(為替ヘッジなし、配当再投資型)の定額定期長期つみたてをメインとする「コア・サテライト」投資

第1章の資産運用の大原則を読んだ方なら、ほぼ説明は不要と思います。

補足も兼ねて、おすすめポイントを簡単にまとめておきましょう。

  • おすすめポイント①ーーNISAの免税枠を利用して将来払う大きな税金を減らし、資産の目減りを防ぐ
  • おすすめポイント②ーー長期つみたてで複利のパワーを活かす
  • おすすめポイント③ーー米国株インデックスのグローバルな経済成長に乗る
  • おすすめポイント④ーードル資産という世界基軸通貨への資産分散が図れる
  • おすすめポイント⑤ーー配当再投資で資産形成のスピードが高められる
  • おすすめポイント⑥ーー定額定期投資で時間分散と購入単価の平準化が期待できる
  • おすすめポイント⑦ーー安全資産で資産のコアを作りつつ余裕資金でハイリターン投資に挑戦する

前提で例示した通り、米国株式インデックスファンドは「S&P500」連動がおすすめです。

これ以外では、全米株式ファンドや先進国株式ファンド、全世界株ファンドもコアのつみたてに向くと思います。

いずれもグローバルな米国大型株が大半を占めるファンドであり、長期のパフォーマンスにそれほどの差はありません(全世界株は米国株の比率が低くなる分、少し落ちます)。

 

「為替ヘッジ」とは、通貨の変動による資産価値の急激な変動を調整する仕組みをさします。海外の株式や債券などを買い付ける投資信託の商品で選択できることがあります。

本来なら資産価値がぶれるのを避けるセイフティーネットの役割を果たしますが、ここではあえて「ヘッジなし」の選択をオススメしておきます。

なぜなら、原則でも書いた「異なる通貨の資産を持つ」という市場分散の意味がなくなるためです。

また、「ヘッジあり」にすると余計な手数料がかさむのもマイナスポイントです。

 

「コア(核)」は米国インデックスファンドでいいとして、「サテライト」はどうしたらいいでしょう。

結論からいうと、コアの資産をしっかりつみたてている限り、サテライトで何を買うかは投資家の自由です。

コアよりハイリスク・ハイリターンな株式や投資信託を購入したり、推奨はできませんが一部の資金でFXや短期トレードなどの「投機」に挑戦してみるのもいいでしょう。

年代や資産状況によって、攻めるか守るか、ふさわしい資産クラスが異なってくるため、そこは第3章を参考に各自で考えてほしいところです。

次に第2位以下を発表しますが、これらを「サテライト」の投資対象と考えてもらうのがいいかもしれません。

第2位 ハイリスク・ハイリターンの「投資信託」「ETF」つみたて

2位以下は資産クラス別の長期リターンをもとに、コア以外で効率よく資産が増やせる投資対象を検討していきます。

下図は「リスク&リターン分析」で、代表的な資産クラスの過去5年のリスク(横軸)とリターン(縦軸)の大きさを示しいます。

資産クラス別リスク&リターン

投資でいうリスクとは単に「危険」という意味ではなく、上にも下にも価格が動く「値幅の大きさ」を意味します。

第1位で紹介した米国のS&P500ファンドはちょうど「先進国株式」あたりと同じです。これをコアで増やしていくのですから、サテライトではこれを上回るリターンのあるハイリスクな投資に挑戦したいものです。

ハイリスクといっても、ふつうの投資信託の場合はすでに分散がきいている分、個別株よりはリスクは高くありません。

この表には出ていませんが、リスクもリターンも限りなく0に近いところに米国や日本の国債があります。

 

ここで紹介したいハイリスク・ハイリターンの投資信託(ファンド)は以下の通り。

米国株のハイテクファンド

日米株のアクティブファンド

米国株のETF

いずれも、資産クラスは「株式」ですが、ファンダメンタル分析で個別株を探すよりはハードルが低いと思います。

 

米国ハイテクファンドの資産クラスでは、図表の右上にある「ナスダック」が筆頭にあげられるでしょう。

ハイテク株やバイオテックなど成長性の高い銘柄の比率が高い「ナスダック市場」に連動するインデックスファンドです。

日本で販売している投資信託には、S&P500連動型同様、ナスダック連動型のファンド商品があります。

 

一方「アクティブファンド」は、先にも書いた通り、ベテランのファンドマネージャーがあるテーマや業界別に自ら選んだ銘柄で組成し、運営するファンドのことです。

電気自動車、AI、半導体、メタバース、小売業界、ゲーム関連、配当株など、多種多様なアクティブファンド商品があります。

長期ではほとんどがインデックスファンドに負けるとも書きましたが、短期では勝っているファンドももちろんあります。

中短期で成長しそうなテーマや業界に投資してみるという意味あいがあります。

投資家は自分の得意な分野や好きな業界などを分析すれば他の投資家より優位性があり、選択した商品の成績も期待できます。

ただし、以下のアクティブファンドには注意が必要です。

手数料が高いーーファンドには「信託報酬」という委託手数料がかかります。アクティブファンドの信託報酬はインデックスファンドよりかなり割高なものが多いため、できれば年1%以内、多くとも2%未満の商品にとどめたほうがいいでしょう。数字が小さいと思っても長期で運用していけば複利効果でかなりの額になる可能性があります。

資産規模が小さいーーインデックスファンドに比べて資産額(投資家から集めたお金)が小さすぎるファンドが多く、売買の流動性が乏しく、いざというときに売却しにくかったり、一気に資金が減って価格が暴落したりするリスクが伴います。なるべく100億円以上の資産のあるファンドを選びたいところです。

 

最後にETFについて。これは「上場投資信託」と呼ばれるもので、株式同様に市場で売買できる投資信託のこと。

たとえば先に紹介したナスダック指数連動のファンドなら、インベスコ社のETF(ティッカーシンボル:QQQ)があり、投資家の人気も高いです。

S&P500連動のETFにはヴァンガード社のVOOなどいくつかのETFがあります。

また、米国市場で取引できる新興国のETFも分散におすすめです。

ブラジル、中国、インド、フィリピンなど各国の代表的株価指数に連動したETFがあり、これからの経済成長が大きいと思う国にまるごと投資できます。

以下は先ほど紹介した Novel Investor の新興国市場(Emerging Markets)ごとのETFと年別リターンの一覧です。

Novel Investor Asset Class Returns Quilt

このほか、日本を含む先進各国のETFももちろんあるし、ブロック別、新興国全体、全世界、全米株式などあらゆる国・地域別のETFがあってとても便利です。

また、日本の証券会社からでは個別株に投資ができない国も多いので、そうした場合にも米国のETFは使えますね。

米国のETFは非常に種類も多く資産規模も大きいため、長期つみたてを前提に資産形成にも利用できます。

第3位 日米個別株の中長期分散投資

1位、2位で比較的リスク小さめの投資信託を紹介してきましたが、ここで満を持して取り上げたいのが個別株投資です。

個別株は株式の投資信託よりさらにリスクが大きい分、どの資産クラスよりもリターンが大きく、うまくすれば資産の急成長も期待できます。

日米の個別株に限定したのは、英語が苦手な人でも米国株なら日本語の参考文献や情報量が充実しているためです。

 

投資先の選択で重要になるのはやはりファンダメンタル分析です。業績のほか、商品・サービス内容をよく調べ、将来の成長度や安定性を見極めます。

各企業のIRページや決算短信、財務3表などを読みこんで分析する必要があるため、日本人ならやはり日本企業への投資をオススメしたいところ。

資産を1億円以上に増やしたいわゆる「億り人」と呼ばれる投資家には、日本の小型成長株で資産を増やした人が目につきます。

 

オススメの個別株投資をもう少し細かく分けてみましょう。リスクとリターンが高い順に並べると、

日本の小型成長株

日米の大型株

日本の高配当株・優待株

となります。

日本の小型成長株は、時価総額500億円以下の銘柄を選び、それが日本株の平均時価総額である2,000億円以上に成長するのを待つイメージ。

また日本の大型株も米国株同様、広く世界を相手に事業を行うグローバル企業がオススメです。

製品が世界ナンバーワンのシェアを持つ「グローバル・ニッチ」な日本企業も案外多いです。

 

高配当株や優待株は成長力は低めですが、売却しない固定ホルダーが多く、暴落時に強いという特徴があります。

わたしたちグローバルファイナンシャルスクールの外部講師のひとりで、優待株で資産4億円をつくった桐谷広人氏は、配当+優待(金額換算)の合計が年4%を超える企業をオススメしています。このリターンがあれば、仮に株価本体が下落したとしても、持ち続けることで毎年安定的にインフレ率以上のインカムゲインが得られるからです。

ただし「優待」は、投資家にとって不平等であることが多く(たとえば100株保有者も300株保有者も同じ優待だったり、外国人投資家には優待が送られなかったり)、今後は配当に切り替わっていく企業が増えていくことが予想されます。

また配当利回りが極端に高い銘柄は、業績低迷で株価が下落していることも多いので、きちんとファンダメンタル分析で精査する必要があります。

第4位 投資用不動産(REIT、現物)への投資

第一章で「資産」の説明をした際、あてはまるのは株、債券、不動産の3つのみであると書きました。

ランキング1~3位は形はちがっても資産クラスは「株式」ということになります。

では、株式を除く2つの「資産」である不動産と債券は、どのように考えたらいいでしょうか。

 

まず両者に共通するのは、不景気でも安定したインカムゲイン(利息・家賃収入)が期待できる投資先であることです。

ただし、投資用不動産の現物は初期投資に数百万~数千万円とかなりの金額が必要で、物件の収益性を見極めるのにもかなりの経験が必要になるでしょう。

では資産の乏しい投資家はなにを買うのがいいのでしょう。興味のある方はこちらの記事が参考になります。

1万円からできる!少額不動産投資が初心者にオススメな理由と注意点

 

上記記事にも紹介していますが、実は不動産にも、株式のように証券化した「REIT(リート=不動産投資信託)」という低価格の投資商品があります。

REITのしくみは以下の通り(出典:三井住友トラスト・アセットマネジメントより)。

REITは実際にある不動産を証券化したもので、現物管理はプロにお任せできる一方、投資家はその一部を購入して賃料収入や不動産売買益を享受できます。

商業施設やオフィスビル、ホテル、倉庫など間接的にさまざまな不動産のオーナーになれるのも現物にないメリットでしょう。

 

ただし、リスク&リターンの表からもおわかりの通り、先進国REITはトータルリターンが期待できなくなっています。購入するなら国内REITの方がまだマシかもしれません。

また現物の不動産は景気低迷でも急には資産価値が暴落しにくく、賃借人からも定期賃料が得られますが、REITは市場売買で暴落することもあります。

第5位 個人向け債券投資(米国中長期債、有名企業の社債、ハイイールド債)

債券は3つの資産の中でもっともリスクが小さく、安定的に利息を得られる投資先です。

ただし株や不動産に比べて利回りが非常に小さく、大きなリターンを得るにはかなりの投資額が必要になります。

ですので、債券は資産を増やすためというより、ある程度の資産をつくった人が資産防衛のために購入すると考えるべきでしょう。

 

資産形成にオススメするのは、

米国中長期債

有名企業の社債

ハイイールド債

です。

その中でも、資産として保有するのにオススメなのは、デフォルト(債務不履行)の心配がほぼなく、「リスクフリー(=リスクなし)」の基準とされる米国の国債です。

現在、米国の中央銀行(FRB)は一時的に高くなった物価上昇の対策として、金融引き締めのための政策金利引き上げを段階的に行っています(出典:時事エクイティ)。

 

これに伴い、国債の利回りも上昇し、10年債利回りは3.44%(9月15日現在)と長期のインフレ率に負けない程度の利回りが期待できるようになりました。

また有名企業が一般投資家向けに公募する社債も、米国債と同等かそれ以上の利息を保証しているケースが多いです。

とはいえ、米国債も社債も利息の目安は年2~3%程度。株などのリスク資産のリターンに比べれば、かなり低いのが現実です。

 

この利率が不満な場合、ハイイールド債のファンドを検討するのもいいかもしれません。

これは高い利回り(ハイ・イールド)の債券ばかりを組み入れたファンドです。

利回りが高いのは債券発行者の信用度が低いためで、1件1件の債券は当然デフォルトリスクも高くなります。

ですが、組み込み債券の種類が細かく多いファンドを選べば、その中の1つがダメになっても全体への影響は軽微で済みます。

 

先ほど紹介した「資産別リスク&リターン分析」でREITや債券の位置を確認してみましょう。

資産クラス別リスク&リターン

ハイイールド債はリスクはかなり小さくなりますが、国内REIT程度のリターンは期待できそうです。

オススメする米国の中長期債や有名企業の社債は、リスクが小さすぎるため、この表には出てきません。

あるとすればずっと左の方で、リターンの高さは0~5%の範囲でしょう。

ちなみに異例の金融緩和を継続中の日本の国債はさらにその左側で、リターンは限りなく0に近い高さでしょう。

現預金よりは多少マシかもしれませんが、長期インフレに勝てず、実質の資産価値は目減りしていくだけかもしれません。

第6位 純金投資

金、銀、銅、プラチナ、レアメタル(希少鉱物)や原油、農産物などを総称してコモディティ(商品)と呼びます。

それぞれが毎日のように売買されていて、需給関係によって価格が上下動します。

適切な価格で売買はできますが、それ自体が富を産むわけではなく、正確な意味では「資産」とは呼べません。

大半は産業用にトレードされる対象であり、資産として長期で保有してもあまり意味はないでしょう。

 

この中でインフレ率にも負けず、長い歴史を通して唯一価値が落ちないとされるのは「純金」だけかもしれません。

採掘資源として有限なため、希少性があり、宝飾品としても人気が高いためです。

換金も比較的しやすいことから、政情不安や戦争勃発など有事の際に「安全資産」として価値が高まることがあります。

ポートフォリオの一部に組み入れておくと、何か有事で株式が暴落したときでも、安全資産として逆に上昇することが多く、資産の防衛につながります。

ただし、景気が上向く局面では株などのリスク資産の方がリターンがはるかに大きいため、純金を持っていても資産価値はほとんど上がらないと考えたほうがいいでしょう。

金の取引業者が「資産の1割を金に」と宣伝していますが、これから資産を増やそうという人には向かない商品だと覚えておきましょう。

 

第3章 年代別・資産別の理想的アセットアロケーション

資産運用のおすすめランキングで、資産クラス別のリスクとリターンがおおよそ理解できたところで、次に年齢・資産規模別の資産配分を考えてみましょう。

大まかな資産クラスの配分のことを「アセットアロケーション」といい、その中でどんな銘柄や商品を持っているか中身を細分化して示したのが「ポートフォリオ」です。

資産が少ない若者は「攻め」の配分、目標額に到達したシニアは「守り」の配分とするため、当然世代によって理想のアセットアロケーションは変わってきます。

 

資産配分を検討する前に、まず世代別にめざす資産の目標額を便宜上決めておきます。

下のグラフは、2人以上世帯の世代別金融資産保有額をまとめたものです。資産クラスを問わず、全部ひっくるめた金額とお考えください(出典:金融広報中央委員会「2021年 家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯)」より)

世帯主年代別金融資産保有額

この世代別の保有資産の平均額(オレンジ)よりやや上に目標額を設定しました。

そしてその額を株(リスク資産)と債券(安全資産)の理想的な比率に分けます。

この比率は、名著『投資の大原則』から、著者の1人チャールズ・エリス氏が考えた「年齢別資産配分計画」をそのまま使用しています。

共著者のバートン・マルキール氏の配分よりリスクが高め(債権比率は低め)ですが、債券比率を高くすると資産の成長が遅くなるため、成長性重視の比率とお考えください。

この比率と目標額を世代別にグラフにしたものがこちらです。

これをもとに各世代の理想的なアセットアロケーションおよびポートフォリオを考えてみました。

注意:あくまで目安にすぎませんので、この通りにする必要はありませんし、遅くから資産作りを始めた人も資産額などを気にする必要はありません。

20~30代のポートフォリオ(資産目標 1,000~2,000万円)

【狙い】

たとえ失敗してもやり直しがきく世代。多少のリスクをとり、「株100%」投資で攻めの資産作りを目指す。目標は10年で元本600万円→1200~2000万円。

【ポートフォリオ案】

①コアには米国の株価指数に連動するファンドがいいでしょう。三度(みたび)この資産推移のグラフをごらんください。

実はこれ「S&P500インデックスファンド」つみたての資産推移シミュレーションでした。つみたてNISA枠で月々33,333円(年40万円)を10年つみたてた場合、年9%の利回りで資産は640万円(元金400万円)を超えます。

②サテライト1にはコアより少しリスクの高い投資信託またはETFを選びます。たとえば米国のETF「QQQ(ナスダック100)」は、成長力の高いハイテク株の組み入れが多く、短期の下落リスクも高い一方、長期でならせば平均15%のリターンが期待できます。月1万円をつみたてていった場合、10年で元本(120万円)の倍以上となる270万円超の資産がつみあがる計算です(下記グラフ参照)。

③サテライト2は、サテライト1よりもさらにハイリスクな個別株を想定しています。ここでは時価総額500億円以下の日本の小型成長株(個別株)を買い、年平均20~50%のリターンをめざします。下図は、平均20%のリターンが期待できる株式をミニ株で毎月1万円ずつ、10年間購入した場合のシミュレーションです。元金120万円に対して資産は370万円超になります。

年平均50%で運用できた場合、月々1万円のつみたて資産はなんとこうなります!

元本120万円に対し、資産は3,000万円超え!そしてこれは決して不可能なことではありません。

40代のポートフォリオ(資産目標 1,500~3,000万円)

【狙い】

収入は増えますが、結婚・出産・教育やマイホーム購入などでなにかとお金がかかる世代。また多忙のために投資の研究に時間がさけなくなる可能性も。その場合、コアのつみたてだけでも継続し、一部は債券で資産を守り、余力があるときだけ攻めの投資をしていくイメージで考えました。目標は10年で元本1,000万円→1,500~3,000万円

【ポートフォリオ案】

①コアのS&P500投信つみたてを継続。40代から始める場合はつみたてNISA枠+αが理想です。ほかに投資する余力がない場合、最低でもこのつみたてだけは取り崩さずに継続したいところ。30代から月33,333円つみたてをコツコツ続けてきた場合、元利合計は15年で1,200万円超、20年で2,100万円超になります(20・30代のポートフォリオの項参照)。

②サテライト1と2は「攻め」の運用で。20・30代でも例に出した「ナスダック100ETF(QQQ)」で年15%、日本小型株で年20~50%のリターンを目指します。

③サテライト3は少しリスクの小さい株式や投資信託で。日米の高配当株または高配当ETFで運用すると、株式市場が暴落しても、配当株の下落率は相対的に小さく、下落している間も手堅い配当収入が見込めます。ただし配当利回りが高すぎる銘柄は逆にリスクが高くなるため、利回り3~4%くらいで、不況に強いディフェンシブ銘柄(生活必需品、医薬品、電力・ガスなど)で運用するのが理想です。

④この世代から安全資産である「債券」を資産全体の15%ほど組み入れます。米国の中長期債や有名企業の社債を中心に、ややリスクの高いハイイールド債のファンドに配分してもいいでしょう。債権ばかりを集めた投資信託・ETFを活用するのもオススメです。

50代のポートフォリオ(資産目標 2,000~5,000万円)

【狙い】

50代は資産形成を加速させる「貯め期」といわれます。男性の平均年収と夫婦の世帯年収が生涯で最も高くなる一方(下記グラフ参照)、子育てやローンの支払いが一段落するため、資金に余裕が生まれるようになるからです。なので、余裕資金はどんどん投資にまわし、定年退職に向けてラストスパートする世代です。とはいえ、一度に資産を失うようなリスクの高い投資に全力投球するのは避け、硬軟とりそろえて確実に増やしていきたいところです。目標は10年で元本1500万円→最終資産2,000~5,000万円。

出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より

 

【ポートフォリオ案】

①コアのS&P500投信つみたてを継続。つみたてNISAの20年を終わらせた段階で2,100万円超の資産になっています。これはそのまま取り崩さず、証券口座で持ち続けるのが理想。仮に月33,333円をそのままあと10年、累計30年継続すると、年9%のリターンで資産は4,500万円超にふくれあがる計算です(売却して利益確定した場合はそれなりに税金がかかりますが)。

②資産の4分の1を安全な債券に先に振り分けておきましょう。万が一株式が大暴落しても、元本+利息が保証される債券が全体の4分の1残れば、株価の回復を待つことができるでしょう。

③サテライト1は、債券をしっかり配分した後なら「攻め」の運用を継続していいでしょう。「ナスダック100ETF(QQQ)」や日本小型株で年15~50%のリターンを目指すというイメージです。

④サテライト2と3は、下の世代よりも保守的な資産クラスで運用したほうがいいでしょう。たとえばリスクが少し低くなる高配当株の投資信託・ETF、不動産のREITなどです。性急に増やすのではなく、ゆっくり育てるイメージが理想です。

60代以上のポートフォリオ(資産目標 3,000~6,000万円)

【狙い】

老後に備えて増やしてきた資産を「しっかり守って」「維持する」年代です。収入が続く限り投資は継続し、定年退職して収入が途絶えたら、徐々に資産を安全な運用に移していくイメージです。退職金は個別株などのリスク資産に集中投資せず、債券メインの安全資産に振り向けるのがいいでしょう。

つみあげてきた資産はなるべく取り崩さず、年金収入で不足する金額分の利息や配当を得るのが理想的です。たとえば夫婦あわせて年金が年200万円あり、支出が年300万円必要な場合、100万円不足します。5%の利息・配当を得たい場合、逆算すると2,000万円の資産が必要になります。同じく200万円不足する場合の資産目標は4,000万円、300万円不足なら6,000万円となります。

【ポートフォリオ案】

①コアは米国インデックスファンドのつみたてを収入のある限り続け、収入がなくなるとともにつみたてはストップ。このコアはそのまま持ち続けるのが理想です。月々の積み立てがなくても、年平均9%のリターンなら元金1,000万円は10年で2,300万円超に、元金2,000万円なら4,700万円と倍以上になる計算です。

②資産の3割程度を国債に振り分けます。米国の中長期債など安全な国の国債で年利2~3%で運用するイメージです。

③サテライト1および2は日米の大型優良株やリスクの小さい投資信託、REITなどの運用に変えるといいでしょう。コアとサテライト1・2をあわせ平均して年5%前後のリターンを目指すのが理想です。65歳からはなるべく年金収入だけで生活し、元本はとり崩さないよう心掛けましょう。

レイ・ダリオのオールシーズン・ポートフォリオ(資産家向け)

最後に紹介するのは、世界的に著名なヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの創設者であるレイ・ダリオが一般投資家向けに考案したポートフォリオです(出典:アンソニー・ロビンズ著『世界のエリート投資家は何を考えているのか』)。

ブリッジウォーターの運用資産は2021年末時点で1,400億ドル以上あり、ヘッジファンドの運用額では世界最大です。「最小リスクで最大の利回りを目指す」ことを目標としており、それを追求するために、資産価格の変動要因となる「インフレ」「デフレ」「経済成長」「経済下降」の4つの局面いずれでも資産を増やせる「オールウェザー(全天候型)」を指向しているのが特徴です。

このため、世界の株式市場全体が大きく下落した2022年上半期も、ブリッジウォーターの旗艦ファンドはプラス32%という高い運用成績を上げました(Bloombergニュースより)。

一般向けに考案された上記のポートフォリオ案では、中長期債の比率が資産の5割以上と高いのが特徴で、金とコモディティ(=原油、穀物などの商品取引)も7.5%ずつ計15%組み入れています。

比率の根拠は明らかにしていませんが、紹介された書籍には、

 

①債券比率が高いのは株式の変動リスク(債権の約3倍)を軽減するため。金額を株式と均等にするのではなく、リスクを均等にしている結果。

②金とコモディティを入れたのは、インフレが加速したときに上昇しやすく、インフレ加速時に下落しやすい株・債券のリスク軽減に役立つ。

と説明しています。

レイのファンドは資産家を相手にしたもので、資産がまだ少ない投資家にとってはこの構成比だと平時の成長率に欠けます。ただ株の暴落時には非常に強く、大きく負けないがゆえに長期で高いパフォーマンスが維持できるという狙いがあります。

実際に著者のチームが、このポートフォリオ戦略の仮想実績を検証したところ、世界大恐慌前の1927年までさかのぼる約75年で、最大の年間損失はマイナス3.98%にとどまり、S&P500のマイナス43.3%を大きく上回った。

すでにある程度の資産を築いた投資家が資産防衛のために、またどうしてもリスクを最小化したいという投資家も、ポートフォリオを作る際の参考にするといいでしょう。

 

第4章 まとめ

さて、資産運用おすすめランキングはいかがだったでしょうか。

データやシミュレーションをもとに、可能な限りロジカルに資産運用のあり方を探ってきたつもりです。

ここで本記事のおさらいをしておきましょう。

第1章 ランキングの根拠となる「資産運用の大原則5カ条」

第2章 資産運用おすすめランキング

第3章 年代別・資産別の理想的アセットアロケーション

投資商品をかなり限定して紹介しましたが、「投資の大原則5カ条」を熟読し、同じ意味合いで同じくらいのリターンが目指せる投資先であれば問題ありません。

まずは「何歳までにいくら」という資産目標をしっかり定め、どの資産クラスをどれだけ持てばいいかを考えることが肝心です。

またコアの継続は非常に大切で、これが資産の「核」としてあるのとないのとでは余裕が異なり、運用のあり方も成績もまったく違ってくるでしょう。

コアがあるからこそハイリスク・ハイリターンの投資にも挑戦できる、コアが育たないうちはリスクの高い投資は控えたほうがいい、くらいに考えてもいいです。まして短期トレードなどの「投機」に資金の100%をつぎこむのはやめたほうが無難です。

 

本記事では20代からの資産形成をシミュレーションしていますが、世は人生100年時代です。

たとえ40代50代から資産作りを始めても、決して遅くはありません。

まわりの資産を見てあせることなく、自らのペースでしっかり資産を築いていってほしい。

本記事がそのための道しるべとなれば幸いです。

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